さて、皆さんは寝違えがどうして起こるのか知っていますか?「変な寝姿勢をしていたから」と思ったあなた。その答えは半分正解ではありますが完璧な答えとは言えません。正解は「首が炎症を起こしたから」です。あの"起きてからの激痛"は首周辺の炎症だったのですね。
では、「変な寝姿勢をしていたから」という答えはなぜ半分が正解だったのでしょうか。
睡眠中の良くない姿勢というのは、体の筋肉が緊張して硬くなり、血管が萎縮することで血行不良や酸欠状態が起こる姿勢です。それによって炎症が発生してしまい、寝違えという症状として現れるのです。つまり、寝違えは首周辺の筋肉の緊張が首周辺への強い負荷がかかった状態、いわゆる"変な体勢"を長時間続けることで起こるのです。
しかし、人間は寝ている間に体のどこかに強い負荷のかかる体勢でいると、無意識に体を動かし、楽な体勢に変わります。これがいわゆる「寝返り」です。寝ている間に寝返りを打つことで、長時間強い負荷がかからないようにしてくれているのです。
つまり、寝返りをしっかり打てていれば、寝違えが起こることはあり得ないということ。裏を返せば、寝違えが起きているということは何かしらが原因でうまく寝返りが打てていないと言えます。
では、この原因を考えていきましょう。原因は大きく2種類に分けられます。1つは外的要因。もう1つは内的要因です。
外的要因とは、電車や自宅の椅子などに座って寝ていたり、ソファなど狭い場所で寝ていたりすることで、物理的に寝返りが打てないという状況です。
例えば床で雑魚寝していた時、狭いベッドに複数人で寝ていた時など、身に覚えがある方もいるのではないでしょうか。もし通常どおり1人で布団で寝ていたのであれば、その寝違えは起こらなかったかもしれません。
また、寝具との相性やパジャマやナイトウェアに着替えずに寝ていることなどが原因の場合もあります。寝具やナイトウェアとの相性が悪いと、上手く寝返りが打てなくなることがあるのです。
他にも、ナイトウェアなどを着用しない状態、例えばうっかり帰ってきたそのままのスーツなどで眠ってしまうと、寝ている間にかいた汗や動きにくさなどが原因で睡眠の質を落としてしまうことがあります。寝る時の服装は軽視しがちですが、多くの影響を与えているということですね。
内的要因はストレスや泥酔、疲労などが挙げられます。それらが寝返りを困難にさせてしまうことがあるのです。その場合、根本から原因を見直さない限り簡単に解決することはできません。また、あまりにも寝違える回数が多い場合、クセになっているほか内臓の病気などの恐れもあるため、専門機関に相談することをオススメします。
もちろん予防することも大切ですが、それでもふとした拍子に起こってしまうのが寝違えです。実際に寝違えてしまったら、どのように対処すればよいのでしょうか。
寝違えた時、まずすべきことは?と聞くと、「風呂などで暖める」や「とりあえず痛いけれど、動かしていればだんだん動くようになる」、「首のマッサージをする」などの対処法がよく聞かれます。しかし実は、これはどれもやってはいけないことです。
先ほども言ったとおり、寝違えは首周辺の炎症です。患部を温めてしまうと、炎症がより悪化してしまう危険性があります。もちろん、悪化すれば痛みも増します。また、無理に動かすことは、硬くなった筋肉を無理やり動かすことになるため、症状の悪化につながります。
マッサージは固くなった筋肉をほぐすことが出来るため一見よさそうに見えますが、筋肉をほぐすことには血行促進効果もあるため、炎症が悪化し、場合によっては肩や背中にまで炎症が広がってしまうことがあります。もちろんマッサージは有効な場合もありますが、個人の判断で行うと悪化の原因になりかねません。特に首周辺はデリケートな部位なので、専門家に任せた方がよいでしょう。
とは言え、なかなかすぐに医療機関などに行くというのは難しいもの。自分で症状を改善させたい時は、「冷やす」ということを意識しましょう。炎症は冷やすことで症状が改善していきます。氷や保冷材などを薄手のタオルなどで包み、患部に当ててあげましょう。10分程度冷やしたら、1時間程度離すのを1セットとして、数セット行うと良いでしょう。直接当ててしまうと凍傷などになる恐れがあるので、必ずタオルなどで挟むようにしてください。
また、筋肉痛などでよく利用する湿布は、冷やす効果による症状改善効果はあまり見込めません。しかし、痛みを和らげることに対しては有効です。一人暮らしをしている人の中には氷や保冷剤の用意はなくても、冷湿布は常備しているという人もいるでしょう。そのような場合は、試してみてください。
寝違えの症状は、通常数日~2週間程度で治ります。寝違えがクセになってしまい、寝違えが治る前にまた寝違えてしまう場合や2週間たっても症状が改善しない場合はすぐに専門機関へ相談しましょう。