座る、立つ、歩くという人間の基本的な動作。このいずれにも深く関わっている部分が太ももです。ここに不調があると、歩行そのものが億劫になってしまったり、高齢の方だとそのまま無気力生活に陥ってしまったりするので注意が必要です。
そんな人間生活において大きな役割を担っている太ももですが、皆さんは太ももの不調と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。イメージしやすいのは、大たい骨の骨折などでしょうか。確かに、バランス能力と筋力の低下した高齢者が大たい骨を骨折して歩けなくなった、という事例はテレビでも盛んに報道されていますし、インパクトも強いので強く印象に残るでしょう。
しかし極端な言い方をすると、こういった怪我は原因がわかりやすく治療方法も確立されているため、きちんと養生すれば元通りとまではいかないまでもある程度改善されます。本当に厄介なのは、骨折や打撲といった直接的な原因を持たない太ももの不調です。具体的にはつっぱり感や疼痛、しびれ、ぴりぴりと電気が走ったような痛み、などですね。痛い箇所も太ももの裏や外側、内側などさまざまで、両足の太ももが痛むという人もいれば左足だけ、右足だけ痛むという人もいます。
さらにこのような不調は症状が安定していない場合も多く、なかなか医療機関への受診に踏み切れない方も多くいらっしゃるのも問題です。痛みには何かしらの原因があるのですから、それが分からなければ痛みの改善は望めません。今回は太ももの違和感の原因の一つ、「坐骨神経痛」について解説していきますので、記事を参考に自分の太ももの違和感について考えてみてください。
坐骨神経痛とは腰から足先まで伸びている、人体の中で一番長い神経である坐骨神経が、何らかの原因によって圧迫されていることによる痛みの総称です。よく坐骨神経痛を疾患名と勘違いしている人がいますがこれは間違い。あくまでも坐骨神経の圧迫による痛みを指します。原因はさまざまあり腰部脊柱管狭窄症や腰部椎間板ヘルニアが代表例ですが、アルコール依存症や生活習慣が原因になっていることもあります。
まずはあなたの太ももの痛み、違和感が坐骨神経痛によるものなのかをチェックしてみましょう。太ももの違和感には、大別して関節が原因のものと神経が原因のものがあります。太ももの筋肉に突っ張るような感覚や電気が走るようなぴりぴりした感覚がある、という場合にはまずは関節の稼動域を確認してみてください。無理のない範囲でしゃがみこみやストレッチなどを行い、痛みを感じたり以前と比べて明らかに稼動域が狭くなっているような場合には関節の疾患の疑いがあります。関節の稼動には特に問題が見られなかった場合は、神経に原因がある可能性が高いです。
さて、この判別方法で痛みが関節に起因するものなのか神経に起因するものなのかわかったと思います。いずれだったにせよ、なるべく早く専門家に見てもらうに越したことはありません。特に神経が原因だった場合には自然治癒というのは難しいですから、今後の方針を立てるという意味でも一度は受診してみてください。
中には神経の問題と聞くと「どうせ意味がないから」と病院に行きたがらない方がいますがこれはダメです。やはり痛みを解消するためのプランを立てるには専門家の知見は不可欠ですし、プロにしかできない、ということも、当然あるからです。
坐骨神経痛の初期治療は投薬とストレッチやマッサージなどのリハビリの両輪で行っていくことになります。これで解消されなければブロック注射や最後の手段として手術があります。その他には、東洋医学に頼るという手もあります。整骨院や鍼灸院では、体のゆがみを治すことで坐骨神経へのストレスを減らし、痛みを取り除いていきます。ただ、注意しなければならないのは、この施術は脊柱管狭窄症やヘルニアの状況によってはあまり効果がないということ。万が一腕の悪い先生に当たってしまうと、逆に悪化させる恐れさえもあります。信頼できる先生がいない場合は、まずレントゲンやMRIなどで脊柱管狭窄症やヘルニアではないかを確認することからはじめましょう。
神経の圧迫を和らげるために日常からできることもあります。姿勢を良くしたり体感トレーニングには体のバランスを正しい位置に持っていく効果があるので、これらを続けるだけで痛みが引くこともあります。特に神経系の場合、太ももの痛みだからといって必ずしも患部周辺に原因があるとは限りません。もし不調が続くようであればためらわずに専門家に指示を仰ぎ、今後の道筋について相談してみてください。歩くこと立つことができないほど症状が進む前に。。